【長野の酒蔵一覧】全国2位の多さを誇る長野県の酒蔵をエリア別に徹底解説
長野県に酒蔵が多い理由
飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈といった3000mを超える雄大な山々が広がる長野県。冬に山並みを覆う深い雪は、春の訪れとともに雪解け水となり、ゆっくり時間をかけて美しい伏流水となります。
さらに昼夜の大きな寒暖差、澄み切った空気など、日本酒造りに適した環境を持ち合わせていることから、古くより醸造が行われてきました。現在県内にある酒蔵は約80。新潟県に次いで国内2位の数を誇ります。
面積が広い長野県は地域によって地形や気候、風土、伝統が異なるため、生み出される日本酒の個性も実にさまざま。次項からは、中信地域、南信地域、東信地域、北信地域の4つのエリア別に長野を代表する酒蔵をご紹介していきます。
中信エリア/主に松本市、安曇野市、塩尻市
県の中央から西部に位置するのが中信エリア。江戸時代から醸造が行われてきた木曽地域をはじめ、全体的にフルーティーな日本酒を造る酒蔵が多いのが特徴です。
大雪渓酒造(だいせっけいしゅぞう)
大雪渓酒造は北安曇郡にある創業明治31年の酒蔵です。昭和24年に社名を「池田醸造合資会社」から、北アルプスと大自然への畏敬の念を込め「大雪渓」に改名。仕込み水には蔵内に湧く北アルプスで育まれた天然伏流水を、米は地元産「美山錦」を中心に使用することを徹底しています。“毎日の食卓で楽しめる酒”をモットーに日常的に親しめる酒造りがこだわりです。
看板商品は昭和28年、全国新酒鑑評会で最優秀賞を受賞し、当時の皇室献上酒にも選ばれた「大雪渓」。フルーティーな「純米大吟醸」や、コクのある「純米吟醸」、軽快でなめらかな「上撰」など豊富なラインアップです。
丸永酒造場(まるながしゅぞうじょう)
丸永酒造場は塩尻市で明治4年から150年以上続く、家族経営の酒蔵。
現在、蔵を取り仕切るのは7代目の永原元春さん。受け継がれた手造りの技術を用い、日本アルプスが育む清らかな水と清酒酵母を組み合わせて、味わい深い日本酒を造ります。品質保持のため山田錦や美山錦などの酒米は、蒸す前に適正な温度を維持できる専用貯蔵箱で保存。洗米から浸漬、発酵工程における温度や水分比率は永原さんによって厳密に管理されています。
代表銘柄は精米歩合39%の山田錦米で作られる「髙波 大吟醸」。キレの良さと豊かな旨みが人気を呼びます。
西尾酒造(にしおしゅぞう)
西尾酒造の創業は安土桃山時代末期の慶長5年。五街道の一つ、中山道の宿場として栄えた木曽谷で300年以上の歴史を歩んできた老舗酒蔵です。
中央アルプス山系の伊奈川渓谷が育む伏流水と良質な酒米を原料に、受け継がれた技術で丁寧な酒造りを徹底しています。
看板銘柄は「木曽のかけはし」。スッキリフルーティーな「純米大吟醸」「大吟醸」、軽やかな飲み心地の「特別純米酒」など多彩な品揃えを誇っています。ビンの中で発酵させた、どぶろく風味の「杣酒(そまざけ)」も人気。辛口の活性にごり生原酒で、しっかりとした旨みと素朴で深みのある味わいを楽しめます。
大信州酒造(だいしんしゅうしゅぞう)
大信州酒造は松本市で明治13年に創業した知る人ぞ知る酒造です。仕込み水は北アルプス連峰の山々が生み出す雪解け水、酒米は長野県発祥の酒造好適米「ひとごこち」と「金紋錦」などを用いるなど、正真正銘の地酒造りを徹底しています。
できるだけ機械に頼らず、手間暇を惜しまず人の手で酒を醸すのがモットー。そんな蔵のシンボルとも言えるのが誠実な姿勢を名に冠した「手いっぱい」。契約農家が丹精込めた金紋錦を麹米38%、掛米45%という精米歩合で仕込んだ、洗練さと軽快さを兼ね備えた1本です。さらに最上級酒「香月」や季節限定「大信州 純米吟醸スパークリング」などラインアップは充実。
南信エリア/主に諏訪市、茅野市、飯田市
長野県の南部に位置する南信エリア。南アルプスと中央アルプスが生み出す伏流水を仕込み水に用いる酒造が多く、喉ごしが良いやや甘口の日本酒が特徴です。
喜久水酒造(きくすいしゅぞう)
喜久水酒造は南アルプスと中央アルプスの谷間、南信州飯田にある酒蔵です。昭和19年、地元の37軒の酒造家が企業合同する形で「喜久水酒造株式会社」として創業した歴史を持ちます。仕込み水には中央アルプスからの伏流水を、酒米には南信州産酒造好適米「たかね錦」を使用。厳しい冬の寒さとともに、代々継承された技術を生かした酒造りを続けています。
上品な吟醸香と芳醇な風味の「純米吟醸 猿庫の泉」や、ほのかな酸味とふくよかな味わいの「純米生酛(きもと)原酒 風越」など個性ある銘酒が人気。全国新酒鑑評会 金賞受賞は通算17回という実力派です。
宮坂醸造(みやさかじょうぞう)
宮坂醸造は江戸時代前期、寛文2年創業の歴史ある酒蔵です。350年以上にわたり、恵まれた気候や土壌、大気とともに酒造りを行ってきました。
「酒は農家と酒蔵の共同作品」をモットーに、産地と品種がわかる米のみを玄米で仕入れ、自社工場で丁寧に精米するのがこだわり。
現在、原料米として使うのは「美山錦」や「ひとごこち」「山恵錦」などの長野県産が約8割、「山田錦」や「愛山」などの兵庫県産が3割。仕込み水は八ヶ岳山系や南アルプス系の伏流水を、酵母には同蔵発祥の「七号系自社株酵母」を用います。フラッグシップ「真澄」は山廃純米吟醸や純米酒、純米吟醸など充実の品揃えです。
春日酒造(かすがしゅぞう)
春日酒造は中央アルプスと南アルプスを望む伊那谷市にある酒蔵です。
大正4年に創業し、2020年に漆戸醸造から春日酒造に改称。中央アルプス水系の伏流水を自然のまま仕込み水に用い、さらに信州特産米の「美山錦」「ひとごこち」を使い、多彩な地酒を醸しています。
澄んだ軟水がもたらす日本酒は、やわらかく濃厚な旨口が魅力です。
代表銘柄は華やかな香りと豊かな味わいの「井乃頭」と、穏やかな香りとキレの良い飲み口の「龍游」。すべての酒が東京農業大学醸造学科を卒業した兄弟二人により造り出されるのも同蔵の特徴です。
東信エリア/主に上田市、東御市、佐久市
長野県の東側に位置する東信地域は全国的にも有名な銘柄が多く、国内外にファンを持つ酒蔵も多数。全体的に清涼感あるスッキリした飲み口の日本酒が多いのが特徴です。
戸塚酒造(とつかしゅぞう)
戸塚酒造は江戸時代には五街道の一つ、中山道の宿場町として栄えた佐久市岩村田にある酒造です。創業は江戸時代前期の承応2年。初代・戸塚平右衛門が駿河国から移り住み、駿河で学んだ酒造知識を生かし、どぶろく造りを手掛けたのが創業のはじまりです。現在の杜氏は16代目。360年以上にわたり、伝統を守り継ぎながら、時代の変化も柔軟に取り入れる酒造りを行います。
コンセプトは「土地の空気や色が感じられる酒」。地域の風土を生かした醸造にこだわり、厳選した長野県産の米や、八ヶ岳山麓の伏流水でスッキリと仕上げるのが特徴です。酒造好適米「美山錦」を100%使用した「寒竹」が看板商品として人気です。
沓掛酒造(くつかけしゅぞう)
沓掛酒造は創業は江戸時代の元禄年間。上田市の千曲川と虚空蔵山の間で300年以上続く酒造です。「信州上田の風土を感じられる酒造り」にこだわり、塩田地域の「美山錦」、鹿教湯温泉の「ひとごこち」、武石地域の「山恵錦」の長野県生まれの酒造好適米3種と、菅平水系の伏流水を用いた醸造を行います。先人たちの知恵と技術を継承しつつも、新しい手法も積極的に取り入れた酒造りを徹底。
代表銘柄は「観音経」の一句である「福聚海無量」から命名した「福無量」。 純米や大吟醸、ひやおろしなど約20という豊富なラインアップです。
武重本家酒造(たけしげほんけしゅぞう)
武重本家酒造は佐久市のほぼ中央、旧中仙道沿いの昔ながらの街並みに佇む、創業明治元年の酒造。醸造を行う建造物30棟は「武重家住宅および武重本家酒造」として国の登録有形文化財にされています。「伝統技術を継承したい」という想いのもと、創業以来「生酛(きもと)造り」を続けているのが特徴。通常では約4週間で仕上げるところ、8週間もの時間をかけてゆっくり醸造しています。長い熟成により深い旨みが加わり、腰の強い味わいに仕上がるのが魅力。「生酛(きもと)造り」を用いた商品としては「牧水吟醸生」「牧水大吟醸生」「牧水純米大吟醸生」の3種を展開しています。
木内醸造(きうちじょうぞう)
木内醸造は江戸時代後期、安政2年に初代が酒造業を始め、明治39年に法人組織として発足した、佐久市にある酒造。以来150年以上にわたり、先人から受け継ぐ伝統の技を重んじながら旨口の酒造りを徹底しています。
代表銘柄の「初鶯」は“最も身近な商品こそ高品質であるべきである”をモットーに、玄米の外側を35%も削り取り、アルコール添加は必要最低に抑えるという本醸造仕込みの銘酒です。自然凍結させた酒米を掛米の一部に用いる「純米酒 凍米」も人気。全国的にも珍しい同蔵独自の製法で、雑味のない、スッキリとした味わいです。
古屋酒造店(ふるやしゅぞうてん)
古屋酒造店は佐久市にある明治24年創業の酒造。仕込み水には八ヶ岳の伏流水を用い、シルクのように滑らかな日本酒造りにこだわる老舗です。
代表銘柄は「深山桜」。手間と時間を惜しまず、杜氏が酒造技術の粋を凝縮した「大吟醸」はほのかな甘味とフルーティーな香りが心地よい逸品。本醸造の新酒を絞ったまま瓶詰した「本醸造 しぼりたて」は生き生きとした風味と深みあるコクが楽しめます。
日本酒だけでなく、焼酎やワイン、ブランデーなども手掛けており、米とズッキーニを使用した「ズッキーニ焼酎25度」は独特の清涼感が人気を呼びます。
北信エリア/主に長野市、千曲市、飯山市
長野県の北部に位置し、新潟県に接する北信地域。全国有数の豪雪地帯であり、雪解け水で酒造りを行う酒蔵が多いのが特徴です。
今井酒造店(いまいしゅぞうてん)
今井酒造店の創業は元禄4年、善光寺で事務をしていた初代が創業した老舗酒蔵です。300年以上にわたり一貫して「味本位の酒造り」を受け継ぎ、豊かな気候風土とともに良質な日本酒を造り続けています。
代表銘柄は江戸時代の謡曲に因み、“理想を高く、進取の気持ちを持ち若さを忘れずに”という想いが込められた「若緑」。純米大吟醸や大吟醸、大吟醸原酒などラインアップの幅広さが魅力です。現在、蔵を取り仕切るのは13代目。長野県産の美山錦を使用した純米吟醸「五岳」や、木島平産の金紋錦を使った純米大吟醸「五岳」の開発を手掛けるなど、常に前衛的な挑戦を続けています。
松葉屋本店(まつばやほんてん)
松葉屋本店は江戸時代中期に長野市小布施で創業し、代々松代藩に地酒を納めていた由緒ある老舗酒蔵。
オレンジ色のレンガ煙突を備えた蔵は地元のシンボルの一つです。200年以上にわたり酒米は長野県産金紋錦を用いるなど、地元の風土を生かした酒造りを徹底。さらに仕込み水は蔵の地下から汲み上げた、ミネラル豊富な「中硬水」を使用するのがこだわりです。
代表銘柄は「北信流」。華やかでキレのある辛口の「純米吟醸酒」や上品な旨みがある「純米大吟醸の生原酒」、ふくよかな甘味の「純米生原酒」など幅広く展開しています。
長野銘醸(ながのめいじょう)
長野銘醸の創業は元禄2年。以来300年にわたり手造り醸造を基本とする老舗酒造です。信州更科の湧水を主水源とする良質な水や、長野県産米を使用するなど、「信州産の日本酒」を頑なに守り続けています。さらに添加アルコールや酵素剤などの化学薬品を一切用いない「酒母立て、丸米、三段仕込」の伝統的な製造技法を徹底して行っています。
展開する主要ブランドは7つ。「姨捨正宗(おばすてまさむね)」は地元の人々の日常酒から贈答用まで幅広いシーンで親しまれている看板商品です。39%まで磨いた山田錦を使用する「純米大吟醸」は華やかでフルーティーな香り。「純米辛口」は軽快でキレが良く、ほのかにお米の旨みを感じられる1本です。
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いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した酒蔵の中には、「日本酒をより身近に感じてもらいたい」という思いのもと酒蔵見学を行っている場所もあります。日本酒の製造工程を間近に体感できるうえ、蔵の歴史を学べたり、試飲を楽しめたり、スタッフからの解説を聞けたりと新鮮な発見があること間違いなし!
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